(1)授業は所与の存在ではなく,教師の目標に基づいて「デザイン」されていることに
気付く。
(2)授業の構成を「分析」し,指導案を開発し,実践を「評価・改善」できる。
(3)「良い」授業についての判断規準を確立し,それに基づいて授業をプランニング
できる。
【授業者】草原和博
【TA】河原洸亮(D),池田優子(M),加藤隼哉(M),吉田純太郎(M)
以上の5名が批判的同僚となって授業を作り上げてまいります。
2021.08.03【第15講】



第15講は最終回にふさわしくスペシャルバージョン。現職の先生方による授業研究会を中継し,受講生はそれをオンラインで観察しました。より良い授業を作ろうとされる実際の様子を目の当たりにしたり,先生方が作成された授業案に関して質問したりすることを通して,受講生は授業研究会のプロセスやマナーを学び取りました。
以上で,社会系(地理歴史)教科指導法の授業は完結しました。全15回の授業を通じて,受講生は授業の分析・開発・評価の方法を学びました。会得したことをフルに活用して,まずは教育実習で大いに活躍されることを祈念します。
(文責:TA・吉田純太郎)
2021.07.27【第13・14講】




本日のテーマ:より「良い」授業に改善するために,私たちにできることをやってみよう!
本日の概念:外在的・内在的な批判・改善,授業研究
これまで授業の分析,開発の仕方を学んできました。そして今回は,授業の評価の仕方を会得します。授業をよりよくするために,日本では授業研究が行われています。教職に就いてからはもちろん,教育実習においても授業研究を通じて私たちは授業の改善を図ります。授業研究の場でいかなる議論が行われているかを知ることで,受講生は建設的な授業批判の方法を学びました。
○どのように授業は改善していけばよいか?
……「向山周慶」の授業をめぐる議論の様相を分析することによって,授業を改善するための2つの批判を学びました。一つは,外在的批判。授業者が理想とする授業を達成するために「技」を問い直します。もう一つは,内在的批判。授業者の理想が社会科の目標に照らして妥当か。「志」を問い直します。なお,批判をする際には,授業者へのリスペクトを欠かさないことも大事になります。
○なぜ,誰のための授業研究か?
……研究授業を任されたとき,私たちはどのような授業をするべきでしょうか。普段と変わらない授業をしたほうがよいのか。はたまた,いつもとは違った挑戦的な授業をやってみるのがよいのか。「三密」を避けつつ,受講生で Take a stand!「観察者にとって学びとなる研究授業を」,「授業者の日ごろの実践を改善できるような研究授業を」。授業研究の在り方について様々に意見を交わしあいました。
(文責:TA・吉田純太郎)
2021.07.20【第11・12講】




本日のテーマ: 授業を作るために,私にできることは何だろう?
本日の概念:実証主義,構築主義
引き続き,授業を開発する方法について学修しました。これまで,本授業では様々な社会科授業を観察してきました。今回はいよいよ自分たちの手で授業を作ってみることにチャレンジ!授業を通して子どもに身につけさせたい力を目標として掲げ,それに応じて学習課題や資料を組み合わせていくプロセスを体験しています。いざ実際に作ってみると,これがなかなか難しい作業であることを受講生は実感したようです。
○社会的議論の授業を作る
……まず,「アフリカへの援助」を題材にした社会的議論型の授業案を検討しました。この授業を作るうえでは,子どもの主張をうまく対立させて,両者を止揚することで新たな知識を構築していくような場を作り出すことができるかどうかが肝になります。外国へ援助をすることは是か非か。これをめぐってよい議論ができるように,受講生は風刺画や統計データを織り交ぜつつ授業を開発しました。
○科学的探究の授業を作る
……次に,「第一回普通選挙」を題材にした科学的探究型の授業案を検討しました。この授業を作るうえでは,子どもの持つ常識や思い込みをうまく引き出しつつ,それを覆したり発展させたりすることができるように問いや資料を設定することがポイントです。なぜ無産政党はさほど選挙で議席を獲得できなかったか。教材研究の成果を遺憾なく発揮しながら,授業づくりに奮闘しました。
(文責:TA・吉田純太郎)
2021.07.13【第9・10講】




本日のテーマ:より「良い」授業を作るために,私にできることは何だろう?
本日の概念:科学的探究,社会的議論
私たちはどうすれば「良い」授業を作ることができるのでしょうか。今回からはいよいよ授業開発の方法を学びます。授業を作るうえで私たちが大事にすべきは,「目標」か,「子どもの見方」か,「科学者の見方」か,「資料」か,それとも「別の何か」か。今回の授業では,異なる2つのタイプの授業を比較・分析することを通じて,これら要素のうち,どれが,いつ,なぜ,大事になってくるかを検討しました。
○科学的探究・ 社会的議論の授業で教師はどのように立ち振る舞うべきか?
……まず,「メキシコの借金」・ 「石山合戦」 の授業において,子どもの社会認識を成長・再構成させるための教師の手立てについて考えました。前者の授業では「なぜ自動車を誠意さんすればするほどメキシコの借金は増えるのか」という問いを以て,子どもの認識を揺さぶろうとする教師の意図が見てとれました。後者の授業では,新たな知識の構築のために,子どもの見解を論拠に基づいて戦わせようとする教師の意図が伺えました。
○ 科学的探究・ 社会的議論の授業 を作るには?
……次に, 「メキシコの借金」・ 「石山合戦」 の授業がいかにして開発されたのかを類推しました。これらの授業が大事にしているのは果たして「学問の説」か。それとも「子どもの説」か。授業者の意図が受講生の回答傾向に表れました。また,受講生がグループワークの成果をPowerPoint上で巧みに表現していたのは,PCを活用した本授業ならではのポイントです。
(文責:TA・吉田純太郎)
2021.07.06【第7・8講】




本日のテーマ:他者の「良い」授業から,どんなことを学ぶことができますか?
本日の概念:発達の最近接領域,オーセンティックな学び
前回に引き続いて,優れた社会科授業実践の分析に取り組みました。今回の授業で焦点を当てたのは,地理・歴史「で」教える社会科授業です。受講生は,徐々にラポールを築きつつあるグループのメンバーとともに,視聴した授業の「良さ」やその「改善案」を検討しました。遠い過去や遠くの地域を学ぶ意義を子どもが実感できるような授業について理解を深めています。
○どのような専門家の見解を参照するか,そしてそれをどのように引用すればよいか?
……先週は「専門家の知見」を参照することのできる媒体についてレクチャーがありましたが,今週は引用の仕方についてTAによる解説が行われました。出典として書名やURLだけを書くのはご法度。刊行年や掲載雑誌名,ページといった情報も遺漏なく記載することが学術的作法です。数年後の卒業論文の執筆に向けて,これを機に引用のルールを習得することが期待されます。
○ Why を探究する授業の特色
……時空間を超えて広く適用することのできる地理的・歴史的理論を教える「良い」授業とは一体どのようなものでしょうか。優れた実践として,「交通ネットワーク」や「律令国家・唐」の授業映像・使用資料を検討しました。「なぜ8世紀半ばから唐の人口は減少したのか」のように,子どもがもつ常識をうまく揺さぶることのできる問いを生成し,それを探究させるという一連の授業展開を受講生は学びとりました。
(文責:TA・吉田純太郎)
2021.06.29【第5・6講】




本日のテーマ:他者の「良い」授業から,どんなことを学ぶことができますか?
本日の概念:知識の構造,科学的思考力
「良い」社会科授業は,どこが「良い」のでしょうか。そしてなぜ「良い」と言えるのでしょうか。今回の授業では,地理・歴史「を」教える社会科授業の分析に取り組みました。久しぶりに対面授業が再開され,受講生はグループワークを通じて建設的かつ生き生きとした議論をすることができました。
○専門家の見解を知るためにはどうしたらよいのか?
……「沖縄県はどのような地域なのか?」「中世とはどのような時代なのか?」。教科書本文のの太字(ゴシック体)ばかりを断片的に追いかけていては答えられません。地域や時代を大局的に捉えるためには専門家の見解に依ることが必要です。そこで,教材研究のために概説書や学術論文を参照することの意義やその方法を,TAが自らの指導経験に即して語りました。
○ What を探究する授業の特色
……では,地域解釈や時代解釈を子どもに認識させることのできる「良い」授業とは一体どのようなものでしょうか。優れた実践として,「亜熱帯の沖縄」の授業映像や,「中世の枡」で用いられた史料を検討しました。事象と事象を関連付けたり,事象と事象の類似点を引き出したりすることによって,帰納的に「沖縄らしさ」「中世らしさ」を子どもに気づかせようとする教師の意図に受講生は気がつくことができました。
(文責:TA・吉田純太郎)
2021.06.22【第3・4講】




本日のテーマ:あなたは,誰が授業をしても「同じ」とは思っていませんか?
本日の概念:リゴラス,ゲートキーピング,エイムトーク
たとえ同じ教科書を用いて授業を作ったとしても,その授業の目標・内容・方法は教師によって大きく異なります。授業の作り方が教師によって違っているのはなぜなのでしょうか。今回の授業では,4人の教師が作成した「大正デモクラシー」の学習指導案をもとに,社会科の教科目標の多様性や,教師による教材解釈の違いについて検討しました。
○学習指導案に表れる教師の信念
……学習指導案の記述やフォーマットをもとに,教師らがいかにして「大正デモクラシー」の授業を構成しようとしたのかを推察しました。大正時代の主要な出来事をたくさん覚えさせたい,米騒動が起きた理由をじっくりと分析させたい,大正時代がいかなる時代であるかを解釈させたい。このように,社会科授業を通じて育てたい子どもの姿が,各教師によってそれぞれ異なっていることを受講生は理解することができました。
○批評会にみる私たちの信念
……「4人の教師が作った授業のうち,どれがよい授業であると思ったか。それはなぜか」。次に受講生は小グループに分かれ,授業に対するそれぞれの考えを語り合いました。「この教師の授業が一番よい!」という意見もあれば,「どれもよいな……」という意見も。つい数年前まで学び手であった受講生が,教え手として理想の社会科授業像を語るのはやや難しかったのかもしれません。しかし,他の受講生と意見交換を重ねるにつれて,よい社会科授業の在り方が各人の中で少しずつ浮かび上がってきたようです。
(文責:TA・吉田純太郎)
2021.06.15【第1・2講】



本日のテーマ:「社会科教師の専門性ってなに」と問われたら,どう答えますか?
本日の概念:レリバンス,バケツ理論,観察による徒弟制
果たしてどうすれば「良い社会科教師」になれるのでしょうか。地理や歴史に深く精通すればよいのでしょうか。それとも,地理や歴史を面白く語るための話術を身につけておけばよいのでしょうか。今回の授業では,世の中の様々な教育言説や自らの被教育体験をもとに,社会科教師に求められる専門性について検討しました。
○自分の被教育体験を相対化する
……なぜ多くの子どもは社会科嫌いなのでしょうか。それとは相反して,なぜ私たちは社会科での教え方を学びたいと思ったのでしょうか。思い出の社会科授業や,教育学部への進学動機を振り返りながら,自らの社会科授業に対する捉えを相対化しました。
○博多華丸大吉の漫才から分かる社会科授業の「あるある」を振り返る
……鉄球を投げるのは危ないのに,なぜ理科の実験ではそんなことをするのか。学校での学びが生活の中に還元されないことをネタにした漫才を鑑賞しました。将来教壇に立つかもしれない私たちは,この漫才で笑えたでしょうか。社会科でもレリバンスを考える必要性があることを認識しました。
○授業「ナチズムの台頭」にみる教師の工夫は何か?これはよい授業か?
……ある高校の授業を鑑賞して,その特質について議論を交わしました。受講生からは,教師の語り口調やペアワーク等の活動がよかったといった意見が多数出てきました。では,なぜ社会科ではそれがよいのでしょうか。はたまたそれは本当によいことなのでしょうか。「よい授業の規準」を今後も引き続き考えていく必要があります。
(文責:TA・吉田純太郎)