社会系(地理歴史)教科指導法 2021

社会系(地理歴史)教科指導法では,民主主義社会の形成者の育成という視点から中等社会科及び地理歴史科を指導できる教師の資質・能力の育成をめざす。本授業で多様な active learning 及びオンライン授業の手法を実体験することで,以下の3点ができることを目的とする。
(1)授業は所与の存在ではなく,教師の目標に基づいて「デザイン」されていることに
  気付く。
2)授業の構成を「分析」し,指導案を開発し,実践を「評価・改善」できる。
(3)「良い」授業についての判断規準を確立し,それに基づいて授業をプランニング
  できる。
【授業者】草原和博
【TA】河原洸亮(D),池田優子(M),加藤隼哉(M),吉田純太郎(M)
以上の5名が批判的同僚となって授業を作り上げてまいります。
 

2020.07.13【第9・10講】

本日の問い:より「良い」授業を作るために,私にできることは何だろう? 
本日の概念:科学的探究,社会的議論

私たちはどうすれば「良い」授業を作ることができるのでしょうか。今回からはいよいよ授業開発の方法を学びます。授業を作るうえで私たちが大事にすべきは,「目標」か,「子どもの見方」か,「科学者の見方」か,「資料」か,それとも「別の何か」か。今回の授業では,異なる2つのタイプの授業を比較・分析することを通じて,これら要素のうち,どれが,いつ,なぜ,大事になってくるかを検討しました。

○科学的探究・ 社会的議論の授業で教師はどのように立ち振る舞うべきか?
……まず,「メキシコの借金」・ 「石山合戦」 の授業において,子どもの社会認識を成長・再構成させるための教師の手立てについて考えました。前者の授業では「なぜ自動車を誠意さんすればするほどメキシコの借金は増えるのか」という問いを以て,子どもの認識を揺さぶろうとする教師の意図が見てとれました。後者の授業では,新たな知識の構築のために,子どもの見解を論拠に基づいて戦わせようとする教師の意図が伺えました。
科学的探究・ 社会的議論の授業 を作るには?
……次に, 「メキシコの借金」・ 「石山合戦」 の授業がいかにして開発されたのかを類推しました。これらの授業が大事にしているのは果たして「学問の説」か。それとも「子どもの説」か。授業者の意図が受講生の回答傾向に表れました。また,受講生がグループワークの成果をPowerPoint上で巧みに表現していたのは,PCを活用した本授業ならではのポイントです。

(文責:TA・吉田純太郎)

2020.07.06【第7・8講】

本日の問い:他者の「良い」授業から,どんなことを学ぶことができますか? 
本日の概念:発達の最近接領域,オーセンティックな学び
前回に引き続いて,優れた社会科授業実践の分析に取り組みました。今回の授業で焦点を当てたのは,地理・歴史「で」教える社会科授業です。受講生は,徐々にラポールを築きつつあるグループのメンバーとともに,視聴した授業の「良さ」やその「改善案」を検討しました。遠い過去や遠くの地域を学ぶ意義を子どもが実感できるような授業について理解を深めています。

○どのような専門家の見解を参照するか,そしてそれをどのように引用すればよいか
……先週は「専門家の知見」を参照することのできる媒体についてレクチャーがありましたが,今週は引用の仕方についてTAによる解説が行われました。出典として書名やURLだけを書くのはご法度。刊行年や掲載雑誌名,ページといった情報も遺漏なく記載することが学術的作法です。数年後の卒業論文の執筆に向けて,これを機に引用のルールを習得することが期待されます。
○ Why を探究する授業の特色
……時空間を超えて広く適用することのできる地理的・歴史的理論を教える「良い」授業とは一体どのようなものでしょうか。優れた実践として,「交通ネットワーク」や「律令国家・唐」の授業映像・使用資料を検討しました。「なぜ8世紀半ばから唐の人口は減少したのか」のように,子どもがもつ常識をうまく揺さぶることのできる問いを生成し,それを探究させるという一連の授業展開を受講生は学びとりました。

(文責:TA・吉田純太郎)

2020.06.29【第5・6講】

本日の問い:他者の「良い」授業から,どんなことを学ぶことができますか? 
本日の概念:知識の構造,科学的思考力
「良い」社会科授業は,どこが「良い」のでしょうか。そしてなぜ「良い」と言えるのでしょうか。今回の授業では,地理・歴史「を」教える社会科授業の分析に取り組みました。久しぶりに対面授業が再開され,受講生はグループワークを通じて建設的かつ生き生きとした議論をすることができました。

○専門家の見解を知るためにはどうしたらよいのか?
……「沖縄県はどのような地域なのか?」「中世とはどのような時代なのか?」。教科書本文のの太字(ゴシック体)ばかりを断片的に追いかけていては答えられません。地域や時代を大局的に捉えるためには専門家の見解に依ることが必要です。そこで,教材研究のために概説書や学術論文を参照することの意義やその方法を,TAが自らの指導経験に即して語りました。
○ What を探究する授業の特色
……では,地域解釈や時代解釈を子どもに認識させることのできる「良い」授業とは一体どのようなものでしょうか。優れた実践として,「亜熱帯の沖縄」の授業映像や,「中世の枡」で用いられた史料を検討しました。事象と事象を関連付けたり,事象と事象の類似点を引き出したりすることによって,帰納的に「沖縄らしさ」「中世らしさ」を子どもに気づかせようとする教師の意図に受講生は気がつくことができました。

(文責:TA・吉田純太郎)

2020.06.22【第3・4講】

本日の問い:あなたは,誰が授業をしても「同じ」とは思っていませんか? 
本日の概念:リゴラス,ゲートキーピング,エイムトーク
たとえ同じ教科書を用いて授業を作ったとしても,その授業の目標・内容・方法は教師によって大きく異なります。授業の作り方が教師によって違っているのはなぜなのでしょうか。今回の授業では,4人の教師が作成した「大正デモクラシー」の学習指導案をもとに,社会科の教科目標の多様性や,教師による教材解釈の違いについて検討しました。

○学習指導案に表れる教師の信念
……学習指導案の記述やフォーマットをもとに,教師らがいかにして「大正デモクラシー」の授業を構成しようとしたのかを推察しました。大正時代の主要な出来事をたくさん覚えさせたい,米騒動が起きた理由をじっくりと分析させたい,大正時代がいかなる時代であるかを解釈させたい。このように,社会科授業を通じて育てたい子どもの姿が,各教師によってそれぞれ異なっていることを受講生は理解することができました。
○批評会にみる私たちの信念
……「4人の教師が作った授業のうち,どれがよい授業であると思ったか。それはなぜか」。次に受講生は小グループに分かれ,授業に対するそれぞれの考えを語り合いました。「この教師の授業が一番よい!」という意見もあれば,「どれもよいな……」という意見も。つい数年前まで学び手であった受講生が,教え手として理想の社会科授業像を語るのはやや難しかったのかもしれません。しかし,他の受講生と意見交換を重ねるにつれて,よい社会科授業の在り方が各人の中で少しずつ浮かび上がってきたようです。

(文責:TA・吉田純太郎)

2020.06.15【第1・2講】

本日の問い:「社会科教師の専門性ってなに」と問われたら,どう答えますか? 
本日の概念:レリバンス,バケツ理論,観察による徒弟制
果たしてどうすれば「良い社会科教師」になれるのでしょうか。地理や歴史に深く精通すればよいのでしょうか。それとも,地理や歴史を面白く語るための話術を身につけておけばよいのでしょうか。今回の授業では,世の中の様々な教育言説や自らの被教育体験をもとに,社会科教師に求められる専門性について検討しました。

○自分の被教育体験を相対化する
……なぜ多くの子どもは社会科嫌いなのでしょうか。それとは相反して,なぜ私たちは社会科での教え方を学びたいと思ったのでしょうか。思い出の社会科授業や,教育学部への進学動機を振り返りながら,自らの社会科授業に対する捉えを相対化しました。
○博多華丸大吉の漫才から分かる社会科授業の「あるある」を振り返る
……鉄球を投げるのは危ないのに,なぜ理科の実験ではそんなことをするのか。学校での学びが生活の中に還元されないことをネタにした漫才を鑑賞しました。将来教壇に立つかもしれない私たちは,この漫才で笑えたでしょうか。社会科でもレリバンスを考える必要性があることを認識しました。
○授業「ナチズムの台頭」にみる教師の工夫は何か?これはよい授業か?
……ある高校の授業を鑑賞して,その特質について議論を交わしました。受講生からは,教師の語り口調やペアワーク等の活動がよかったといった意見が多数出てきました。では,なぜ社会科ではそれがよいのでしょうか。はたまたそれは本当によいことなのでしょうか。「よい授業の規準」を今後も引き続き考えていく必要があります。

(文責:TA・吉田純太郎)