社会系(地理歴史)教科指導法 2022

社会系(地理歴史)教科指導法では,民主主義社会の形成者の育成という視点から中等社会科及び地理歴史科を指導できる教師の資質・能力の育成をめざす。本授業で多様な active learning 及びオンライン授業の手法を実体験することで,以下の3点ができることを目的とする。
(1)授業は所与の存在ではなく,教師の目標に基づいて「デザイン」されていることに
気付く。
2)授業の構成を「分析」し,指導案を開発し,実践を「評価・改善」できる。
(3)「良い」授業についての判断規準を確立し,それに基づいて授業をプランニング
できる。
【授業者】草原和博
【TA】玉井慎也(D),正出七瀬(M)
以上の3名が批判的同僚となって授業を作り上げてまいります。
 

2022.08.02【第15講】

本日のテーマ:【授業評価②-実際にやってみる】

本時の内容と視点
○良い社会科授業の条件・オンラインで,授業研究会(廿日市市/大竹市社会科研究会)のようすを観察しよう
・本講義の学びを評価する規準と基準を作ろう

全15回の最終講義にあたる本日は、これまでの学びを活かしたオーセンティックな学びとなりました。
 前半部では、廿日市市の中学校での授業研究会に登壇する草原先生と授業実施者である現場の先生方とのやりとりをオンラインで繋ぎ、本講義の受講生が観察しました。草原先生の講評の中では、前週に受講生が書いたコメントも一部紹介されました。授業研究会を見た受講生の気づきは多様で、指導案では読み取れなかったことや、実施者の先生の意図に対する感想のほか、草原先生のコメントについてコメントした受講生もいました。

 その後後半部では、TFである玉井さんを中心に、これまで毎時間確認された「本日の概念」のランキング投票や、これらの概念を使用した再度の指導案評価といった活動を通して、本講義全体のまとめが行われました。講義・受講生の裏でのTAの学びも紹介しました。
 受講生には、最終課題として指導案作成が課されます。これまでに学んだ見方・考え方を活用した個性と工夫ある指導案が寄せられるものと思われます。


2022.07.26【第13・14講】

本日のテーマ:【授業評価①-リフレクションの作法】
本日の概念:「授業研究」「省察」「内在的批判・外材的批判」

本時の内容と視点
○社会科教師の専門性
・「讃岐の糖業の父:向山周慶」をめぐる議論を再現しよう
・授業研究の理念と手続きをモデル化しよう
○内在的批判と外在的批判
・棚橋先生は,オリジナルの授業を,どのように・なぜ改善したか
・桑原先生と岩下先生では,なぜ棚橋プランの評価が異なるのか
・谷先生は,棚橋先生の授業を,どのように・なぜ改善したか

 授業研究においては、互いにどのような批判をどのようにすることがより良い授業への改善へとつながるのでしょうか。本日の中心は、「讃岐の糖業の父:向山周慶」をめぐる紙面上の議論を考察することを通して、内在的批判と外在的批判を学びました。
 1時間目にあたる第13講ではまず、前時の振り返りを行いました。各グループが作った指導案を草原先生、TAならどのように批評・改善するかを示します。授業の改善案とともに、批判・代替案の種類に関する伏線でもあります。その後、誌面討論会の登場人物とそれぞれの主張について、受講生の意見から確認していきます。多くの受講生がこれまで学んできた見方や概念から各改善案の改善意図や、批判内容・論点の違い、そうした違いが生まれる理由を詳述、説明することができていたものと思われます。


 14講の終盤での「研究授業は普段通りの授業をすべきか」を問うたTake a Stand!では、「普段通りすべき派」からも、「普段はできない挑戦的な授業をすべき派」からも「授業研究の意義とは何か?」を問い直す意見が表明され、闊達な議論となりました。最終部では、来週実際に草原先生が授業研究会で講評を行う指導案を受講生も検討し、「批判」と代案が提案されました。いくつかは実際に自習の検討会で草原先生より実施者の先生へ提案される見込みです。

2022.07.19【第11・12講】

本日のテーマ:【授業開発②-実際にやってみる】
本日の概念:「構築主義」「実証主義」「コモン・グッド」

本時の内容と視点
○理論または言説の選定
・「第1回普通選挙」と「アフリカ」の教材を吟味しよう
・2つのアプローチで授業を構想しよう
○知識と対話する,他者と対話する
・批判(A ⇒B)を通して,科学者なりの社会を捉える枠組み(仮説)を分かろう
・討論(A vs B)を通して,私たちなりの社会を捉える枠組み(合意)を作ろう

 今回の授業の中心は、「第1回普通選挙」と「アフリカ」の教材を吟味し、科学的探究あるいは社会的議論の視点から授業づくりを実際にやってみることです。大雨の影響で、完全オンライン授業実施となりました。

オンラインでの授業の様子


 第11講では、受講生が小課題として考案した学習課題を踏まえ、当該資料の概要及び、その活用について考えました。学問の説を探究する
 第12講の最後には、各グループごとに科学的探究あるいは社会的議論を視点に、新たな資料を踏まえて授業を実際に構想していきます。班ごとに目標が構想され、資料の配列・それぞれに対する指示・発問・活動例に工夫が凝らされました。
 次回からは、いよいよ最終パートである授業評価のフェーズに入っていきます。

2022.07.12【第9・10講】

本日のテーマ:【授業開発①-授業デザインの論理】
本日の概念:「科学的探究モデル」「トゥールミンモデル」

本時の内容と視点
○社会科の目標設定
・「メキシコの借金」と「石山合戦」の相違点とは何だろう
・授業づくりの手続きを予想しよう
○分かるとつくる
・授業づくりに当たって,教師が行うべきタスクをリスト化しよう
・子どもを「引きだし」「揺さぶる」ために,教師はどのような工夫をしているか

 本講義からは実際に「授業開発」を企図していきます。が、導入部では教育実習から戻ってきた4年生の受講生の感想を聞く時間が設けられました。本講義の受講生の多くは来年実習へ行く予定の学部2年生であり、多くの学生が食い入るようにその体験記を聞いていました。


 その後、受講生の取り組んできた事前課題小レポートの内容をもとに、「メキシコの借金」と「石山合戦」の2種類の授業の特徴を考察していきます。両授業における目標設定の違い、問いの違い、教材や資料の内容・使い方の違いを考えていきます。両授業を特徴づける「科学的探究」と「社会的議論」からそれぞれの授業における教師の役割と授業づくりの方法論について検討しました。

2022.07.05【第7・8講】

本日のテーマ:【授業分析②-whyの探究指導】
本日の概念:「オーセンティック」「最近接領域」


本時の内容と視点
○地理や歴史「で」教える
・「交通ネットワーク」と「律令国家・唐」との共通点とは何だろう
・教師の意図を読み取ろう
○規則性と構造
・「社会」の分かり方・教え方に,どのような異同があるだろうか
・子どもの社会参加をいかにして引き出すか

2022.06.29【第5・6講】

本日のテーマ:【授業分析①-Whatの探究指導】
本日の概念:「知識の構造」「科学的思考力」


本時の内容と視点
○地理や歴史「を」教える
・「亜熱帯の沖縄」と「中世の枡」の共通点とは何だろう・教師の意図を読み取ろう
○地域の特色,時代の個性
・「地域」「時代」の分かり方・教え方に,どのような異同があるだろうか
・子どもの社会認識にいかにして挑戦するか

2022.06.21【第3・4講】

本日のテーマ:【社会科観・授業観の省察② —教科目標の多様性、教科観の相対性】
本日の概念:リゴラス,エイムトーク


本時の内容と視点
○教科目標の多元性
・「大正デモクラシー」を教えるならば、なんのために・何をこそ教えるか
・  4人の教師の指導案は、どこが、どのように違うか
○教科観の多様性
・あなたの「一押し」の指導案はどれか、それはどうして
・民主的な国家・社会の形成者とは、授業でどのような市民を育てるのか

第3講・第4講も前回に引き続き社会科観・授業観の省察がメインテーマです。今回は社会科の教科目標の多様性と教科観の相対性を4種類の「大正デモクラシー」に関する授業実践(指導案及び当該授業に係る資料等)を通して考えました。

第3講では、草原先生による教科書分析のモデリングと、学生の回答を中心とした4つの指導案に違いが生まれた理由に関する議論が行われました。上記指導案の前提となっている見開き3ページ分の教科書における資料や記述が丁寧に検討された上で、それぞれの指導案には、どのような違いが、なぜ見られるのかを考えます。学生からは、指導案のフォーマットの差異を指摘する意見や、教師の目標観の相違に関する主張、社会科の教科特性に迫る意見などが出されました。

続く第4講では、受講生の「一押し」の指導案に関する意見文と先生からの解説を踏まえて、各指導案の特色を検討・整理が行われました。その上で、再度「良い指導案」に関する意思決定と、グループごとでの議論が行われました。多くのグループでさまざまな対立軸が記述されており、各々の「良い」と考える理由がより深く言語化・メタ認知されたものと思われます。

 今週の2コマの授業は、事前に小レポートとして受講生が取り組んだ課題をベース・前提に計画されました。どの受講生も熱心に自分の意見を記述しており、授業内でそれが他者と比較・考察され、講義の内容も踏まえた省察が進んだものと思われます。次週からは、いよいよ本格的に授業分析が始まる予定です。

2022.06.14【第1・2講】

本日のテーマ:【社会科観・授業観の省察① —理想の社会科教師を追い求めて】
本日の概念:レリバンス,バケツ理論,観察による徒弟制


本時の内容と視点
○オリエンテーション
 ・「博多華丸・大吉」の漫才にみる理数科授業の「あるある」と「突っ込みどころ」
 ・中高生が社会科を嫌いな理由はどこにあるのだろう
○社会科教師の専門性
 ・新任教師の授業「ナチズムの台頭」の目標を推論する
 ・教師とは「専門職」だろうか、社会科教師の「専門性」とは何だろうか?

全15講本講義における初発の問いは「『社会科教師の専門性ってなに』と問われたら、どう答えますか?」です。第1講及び第2講では、この問いを中心に、受講生が高校までに受けてきた社会系科目の授業、それぞれの被教育体験を相対化することが目指されました。

第1講ではまず、自らの素朴な「社会科教師のイメージ」を、講義室内の立ち位置で表現しました。草原先生はマイクを持って、そこに立つことを決めた理由を受講生に聞いて回ります。学生からは「他の教科に比べたら専門性が低そうだから」とか、「社会を教えてなかったら何を教えているんだろう」といった率直な意見が出されました。

第2講の中心は、新任教師による「ナチズムの台頭」に関する授業の検討です。ヒトラーの個人史に焦点を当てながら、ナチスの台頭がストーリー性を持って語られる授業は「良い」授業でしょうか。この授業を「良い」と見るか否か、そしてその根拠を通して、何を根拠に授業を評価しているのか、あるいは評価すべきなのかについて検討しました。

本年度はさまざまな学部・学科から100名近い学生が履修する見込みで、初回から各グループで闊達な議論が行われていました。次回は、実際に複数の指導案を検討しながら、社会科観・授業観の省察を深めていきます。

(文責:TA・正出七瀬)